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久し振りに隣町をぶらつくと随分と様変わりしていた。一番客が入っていたゲーセンが潰れ、古本屋は全滅し、交番は売りに出されていた。若い女性と酒を飲める店は乱立しているが、賑わっている様子はない。そもそも人が少ない。上空を通り過ぎる爆撃機がわざと不発弾を落としていく。
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滋賀でゲリラをしていた頃、パート傭兵のおばちゃんが、スナイパーの弾を避けるコツを教えてくれた。「ええか、こうきたら、こう!」コツを飲み込めない仲間が三人死んだ。小隊のうち生き残った僕とおばちゃん二人で、一晩中湖畔を這いずり回り、追手から逃れた。尻ばかり見ていた。
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急に三人も仕事に来られなくなった。十五人でする仕事を十二人でしなければならなくなった。初仕事だというのが五人いる。手が足りないらしく追加人員は無し。新人の内最低二人は途中で逃げ出すだろう。「興奮するよな」同僚の山口さんが言う。「ね」どうせ半数は生きては帰れない。
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窓に張りつくヤモリの向こうで花火があがる。夜中にも明かりを消さないから窓辺には虫が寄りつき、ヤモリは日に日に太っていく。遠くの小さな花火を見飽きてPCに向かうと破裂音がした。振り向くとヤモリが粉々になっていた。花火の光と音がいつの間にか重なっている。
※この日SF大会でお題ツイノベというのをやっていたらしいので便乗して。お題は「花火」。
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無駄毛処理をしている最中勢い余って切り落としたちんちんを見下ろしながら、明日から女として生きていかなければならなくなったのだから、化粧とか覚えた方がいいかしら、などと考えたが、ちんちんがない男というだけで、性別が変わるわけではなかった。寝て起きたら生えてたし。
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ご主人の容態のことで大切な話があります。大変言いにくいのですが、「隣の客はよく柿食う客だツアー」に参加されていたご主人はバスガス爆発に遭い、内臓が蛙ぴょこぴょこみぴょこぽこになっています。入院するので青パジャマ赤パジャマ黄マジャマを用意しておいてください。
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半魚人が「娘さんを僕に下さい!」と言ってきたら「お前みたいな半人前に娘はやらん!」と言えるのだが、娘と付き合うのは三分の二鳥人や五分の三馬人ばかりで機会が巡ってこない。馬人の時は「どこの馬の骨かわからん奴に……」と言えたが、家系図を持ち出して説明されてしまった。