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「私は貴方を愛しています」「私は貴方を必要としています」「私は貴方が欲しい」三人の若い美形貴族がかぐや姫に求婚した。彼らは無理難題を出され世界各地に散っていった。その間にかぐや姫は「姉ちゃん、めっちゃ好きや」と言い寄ってきた関西人のおっさんと夫婦になったそうな。
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暑くなると屁を漏らす女であった。生まれつき体温調節が苦手で、犬が舌を出してハッハッとやるように屁で体温を逃がしていたのだ。同衾中も絶えず漏らした。別れた原因も屁であった。街で見知らぬ男と歩いていた女は、私には聞かせたことのない爆音の屁を鳴らし続けていたのだった。
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アドレス帳の一つ下のと間違えて携帯から自宅に電話をかけると、無人のはずなのに人が出て、私の苗字を名乗った。「五郎さんはおられますか」と聞くと「私ですが」思わず叩き切る。今私がしたような不審な電話がよく家にかかってきていたのを思い出した。帰宅すると私はいなかった。
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双方目隠しプレイに凝っている。互いに手探りでむさぼり合う。暗闇の中で五感は研ぎ澄まされ、肉体は過剰なまでに敏感になる。美男美女同士でなくとも何の不満もない。ただ、時折あるはずのない「三人目の手」に触れられることがある。目隠しを取ってみても部屋には二人しかいない。
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夏休みは人を変える。新学期初日、教室に集まった級友の中で、変わり映えしないのは僕だけだった。身長が50cm伸びた人、子供を産んだ人、結婚した人、離婚した人、日焼けしすぎて焼死した人などがいた。それでも昼休みになるとみんなドッジボールの場所取りに駆け出していった。
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生まれて初めて空を飛べた鴉の雛は無知ゆえにどこまでも飛翔した。大気圏を抜けて宇宙に飛び出し、人工衛星に辿り着いた。真空中で凍り付くことを知らない雛も喉の渇きは自覚出来たので、水色の惑星に向けて飛び降りた。帰還して親鳥に叱られた彼は二度と地球を出ることはなかった。
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今働いてる工場では工員の能力をA〜Fランクに分け、急ぎのラインは上位ランカーで固めるなどの工夫をしている。ある日Gランクの人が一人でラインを任されており、駄目工員過ぎて一日中掃除なのかな、と思ったが一人で十人分の働きをするゴッドハンドのGだった。手も十本あった。