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「○町の交番に車で突っ込んでください」「電車の中で煙草を吸う輩を窓から突き落としてください」「今の首相を暗殺してください」といった内容のチェーンメールがよく来る。もちろん交番には突っ込まず、誰も殺しはしないが、時折指示通りに行動したらしき奴のニュースが流れてくる。
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美人ほど仕事をしない。体格の良い人ほど持久力がない。サボるのに熱心な人ほど疲れやすい。統計を取ったわけじゃないけれど、大体の見た感じ。目が三つ以上ある人は意外とエロく、内臓が空っぽの人は度量が広い。背中に羽根が生えている人も通勤時は飛ばずに歩く。これは経験則。
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四歳になる息子が最近将棋を覚えたのだが、既に私より強い。桂馬の使い方がどうも腑に落ちないらしく、自陣に置いたまま動かさない。その隙を突いて攻め込むのだがそれでも負ける。守りを固める気がなさすぎ、と息子は手厳しい。だから母さんも、と息子は言いかけてやめてしまった。
私の小説の最初の読者はいつも妻だ。「よくわからない」「救いがなさすぎ」「下ネタ多い」などとありがたい指摘をくれる。だが指摘を受けて直したものを見せると、さっきの方が良かった、と言われる。「ますますわからない」「さらに救いがない」「下ネタしかない!」と怒られる。
弦を引き絞り矢を穿つ子供が屋根の上で地団駄を踏んでいる。「射ても当たらん」町は的になるゾンビ達で溢れているが射手の腕はまだ未熟だ。弓兵の息子だった少年は元父親のゾンビも気軽に射る。嵐が来そうなので屋根から降ろす。大雨に打たれてゾンビ達は肉を流して土に帰っていく。
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生まれつき左手薬指が欠損していたので、結婚出来ない運命だろうね、と散々言われて育ったが、三度結婚している。前の二人は、僕が君の薬指になるとか阿呆なことを言う輩で、そんな男を選ぶ私の目も悪いのだからうまくいかなくて当たり前だった。ちなみに今の夫の手には小指がない。
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出荷された野菜に芋虫が原型のまま張りついていることは少なくて、大抵は潰れて緑色のゴミとして葉を汚している。肌色の汚れなら人の指、白くて固いものなら人の骨だ。肥料として優秀なので畑にはそこら中に人が埋めてある。男女一緒に埋めると稀に赤子が生えてきて狸に食われる。
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メロスは激怒した。「パン買ってきて」とセリヌンティウスが言い出したのだ。「サークルKで六十円の菓子パンが二個で百円だから四つ買ってきて。一個あげる」と二百円を出したのだ。メロスは怒りを忘れて走り出した。自分の分はシュークリームにした。二人で仲良く食べ終えた。
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抜きすぎた鼻毛を鼻の穴に戻した。毛穴に刺さるはずもなく、鼻息とともに吹き飛んだ。若死にした友に、だらしなく生きている俺の命を分けてやりたいと思ったこともあったが、そんな感傷はこの鼻毛みたいなものだろうと思った。亡友の話は嘘だが、鼻毛を抜いた痛みで涙はこぼれた。