2010年11月13日

ツイッターノベル209〜215 テーマ「人体」

そういえば「泥辺五郎短編集」に『ないはなし(小片十編)』、「くじで出たお題で小説書こうぜ企画」に、『彼女は重たい』アップしてました。

テーマ「人体」

10/22 209
 口はお互い一つしかないから、話しながらキスが出来ないし、キスしながら乳首を舐められない。でも三つも四つも口があっても僕らはやっぱりキスばかりしているかもしれない。「眠ろう」と僕は言おうとした。三日間寝ていなかった。でも口は塞がれていたし、既に彼女は眠っていた。

10/23 210
 好きなバンドが解散したとか、友達が転校したとか、何かと理由をつけてピアス穴を空けていった。十個目は「キリがよくなるから」というものだった。穴の殆どが塞がってしまった今では思い出せない理由もある。再結成した好きなバンドのライブを、あの時転校した友達と明日見に行く。

10/24 211
 豊かに肉がある背中と違い、指の甲にタトゥーを入れるのは皮膚が薄い分物凄く痛い。けれどその痛みから解放された時の快感が忘れられず、また、十本もあるがために次々と新しいものを彫りたくなってしまう。限られたスペースだから小さな文字を。十本合わせて一編の短編小説を。

10/25 212
 右の眼球を売った金で購入した義眼が届いた。眼帯ともお別れだ。擬人屋で一目見た瞬間から何もかも投げ捨てても欲しくなった。翡翠を通したその目で世界を見てみたいと思った。そのためには今ある眼球が邪魔だったのだ。眼窩にはめて右目だけを開ける。鏡には義眼しか映っていない。

10/26 213
 人を着ているから胸の奥に胸がある。心の奥に心がある。長い間脱がずにいるから中にいるのが本当に自分だったか思い出せないでいる。二重写しに見る夢の中で聞き覚えのある声が鳴る。獣じみていて野蛮なその響きに思わず耳を塞ぐが、内側の耳にその叫びは響き続ける。おお!おおお!

10/27 214
 私は生まれつき、なかった。母親から産み落とされたものの、手も足も、口も鼻も、心も体も存在していなかった。それでも両親は私を慈しみ育ててくれ、次第に私は私となっていった。だから私の肌年齢はずっと若く、恋人はその肌を愛してくれる。幼すぎる心を温かい心で包んでくれる。

10/28 215
 左太股に牙が刺さっている。幼い頃、雑種犬を拾い、飼いたいと駄々をこねた。その犬は私にだけ懐いてくれず、ある日私に大怪我を負わせて失踪した。牙を抱えて生きていると、甘噛みでは物足りなくなる。噛んで、と頼むと男達は優しく歯を立てる。求めているのはそんなものじゃない。



posted by 泥辺五郎 at 11:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ツイッターノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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